そろばんは、指先と頭を同時に使う日本伝統の学習法です。近年では計算力や集中力を鍛える手段として再注目され、幼児から小学生まで、多くの子どもたちが習い始めています。とはいえ、正しい練習をしないと「いつまで経っても上達しない」「途中で挫折してしまう」ということも。そこで本記事では、初心者が最短でそろばんを上達させるためのコツをわかりやすくまとめました。保護者がサポートできるポイントや練習のコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
そろばん学習の魅力
計算力の向上と暗算力の育成
そろばん最大の魅力は、計算力と暗算力を同時に伸ばせる点です。指先を使いながら珠を動かすことで、数のイメージを脳内で素早く組み立てる力が身につきます。計算が苦手なお子さんでも、練習を続けるうちに「数字を読む・理解する」スピードが驚くほど速くなるケースも珍しくありません。
集中力・忍耐力が鍛えられる
そろばんは同じ作業の反復が多く、自然と集中力や忍耐力が養われるというメリットがあります。小さなお子さんでも少しずつステップアップしながら続けることで、学習全般に役立つ「落ち着いて取り組む姿勢」を身につけやすくなります。
成長が目に見える
級や段が設定されているそろばん学習は、成長を数値化して実感しやすいのも良い点です。検定に合格すれば子どもの自信につながり、さらなる上達の意欲が高まります。
そろばん上達のコツとは?
そろばんで大切なのは、「正しい指使い」「数のイメージ化」「計算手順の反復」という3つの要素です。それぞれを意識しながら練習することで、初心者でもスムーズに上達しやすくなります。
正しい指使いを身につける
- 親指と人差し指、中指を使う指運びをしっかり覚える
- 最初はゆっくりでも正確に珠をはじくことを意識する
- 無理にスピードを上げようとせず、正確性を重視
数のイメージ化を意識する
- それぞれの位(1の位、10の位など)の珠が何を表しているかを視覚・感覚で捉える
- 計算時に「そろばんを動かしているイメージ」を頭の中に描く
- 慣れてきたら暗算とリンクさせ、頭の中でそろばんを操作できるように練習する
計算手順の反復
- 足し算や引き算、掛け算、割り算の手順を一つひとつ確実に覚える
- 簡単な問題から徐々にステップアップし、同じ形式の問題を繰り返す
- 正しい計算方法が身についたら、検定問題や市販の練習帳を活用してスピードを上げる
初心者が最短で上手くなる練習ステップ
ステップ1:指使いの基本をマスターする
初心者で最も重要なのは、「珠を動かす指を固定する」ことです。そろばんでは主に親指・人差し指・中指の3本を使い分けます。自己流で覚えると後で修正が大変なので、最初の段階でしっかりした指導を受けるとスムーズです。
ポイント
- 左手でそろばんを固定し、右手で珠をはじく
- 天珠(上の珠)と地珠(下の珠)を動かす際に使う指を明確に覚える
- 慣れるまで何度も同じ操作を繰り返す
ステップ2:一桁の足し算・引き算に慣れる
次のステップとして、一桁の加減算に集中して取り組みます。珠を上下させる動きに慣れつつ、数字と珠の位置関係を体で覚える段階です。
- 1+2、2+2、3-1などのごく簡単な問題から始める
- 指先ばかり見ず、答えをイメージしてから珠を動かす
- できた問題には丸をつけるなど、目に見える形で達成感を得られるようにする
ステップ3:一珠と五珠の補数計算をマスターする
一桁に慣れ始めたら、一珠だけを動かす計算と、五珠を含む計算を織り交ぜながら「補数」を意識する段階に進みます。ここでの最大のポイントは、そろばん特有の「足せない分は引いてから入れる」という考え方を身につけることです。
- 一珠のみを1回動かす加減算
例:1+2、5+3など、足す・引く珠がひとつだけ(または五珠だけ)で済む問題
桁数が二桁でも、一珠のみで完結する場合はここで練習する - 一珠と五珠を同時に動かす加減算
例:1+4(「1を取って5を入れる」)、2+4、3+3など
5の補数を暗記し、「足せない4は1を取って5を入れる」「足せない3は2を取って5を入れる」などの手順を身につける - 10の補数を使った加減算
例:9+1、8+2など
1〜9までの「足せない1は9を取って10を入れる」など、10の補数の考え方も暗記し、反復する
これらの計算パターンをしっかり体得することで、そろばん特有の「補数計算」にスムーズに慣れていきます。
一珠・五珠の組み合わせを含めると、そろばんの弾き方はおよそ100種類にも及びますが、ここで学ぶ基礎パターンを繰り返すことで、次のレベルに移行しやすくなります。
ステップ4:複数桁・繰り上がり計算にチャレンジ
一珠と五珠の補数計算まで身についたら、複数桁の加減算や繰り上がり・繰り下がりを伴う問題に進みましょう。ここでは桁数が増える分、そろばん上で確認する箇所が多くなります。
- 15+7、12+8など、繰り上がりが出る加算
- 23-5、35-12などの複数桁の減算
- 9+1のような10の補数を使いながら桁が変わる場合も、慣れればスムーズに計算可能
複数桁を同時に扱う場合は、桁ごとに正確に珠を動かす意識を持つことが大切です。あわてて珠をはじくと間違いやすくなるため、はじめは少しゆっくりでも確実に行いましょう。
ステップ5:掛け算・割り算で応用力を鍛える
足し算・引き算に慣れてきたら、掛け算や割り算に進みましょう。そろばん特有の計算手順があるので、最初はゆっくり確実に操作手順を身につけるのが大切です。
- 掛け算:大きい数になるほど桁数が増えるため、桁の移動や珠の配置を正確に捉える
- 割り算:あまりの扱い方や、商を置く位置を理解するのがポイント
練習法を効果的にするポイント
時間を決めて集中する
長時間だらだらと練習するよりも、短い時間でも集中して取り組むほうが効果的です。例えば「1回15分、1日に2〜3回」などスケジュールを決め、集中→休憩のメリハリをつけると、子どものモチベーションが維持しやすくなります。
スモールステップで達成感を積み重ねる
練習問題を一気に難しくすると、子どもが挫折しやすくなります。簡単な問題から少しずつレベルアップし、合格やクリアのたびに「よくできたね」と褒めることで、自信とやる気を育てましょう。
目標設定と記録の可視化
- 何級に合格する、何点以上取れるようにするなど、具体的な目標を設定
- 練習ノートやアプリなどで、スコアやタイムを記録しながら成長を可視化
- 目標を達成したら、ご褒美シールやほめ言葉でモチベーションを高める
保護者ができるサポートと教室選び
家庭でできるサポート
- 声掛けと褒めるタイミング
上手くいったときはすかさず褒める、ミスしたときは落ち込ませずに再挑戦を促すなど、ポジティブな声掛けが大切です。 - 環境づくり
静かで集中しやすい部屋や時間帯を選ぶなど、学習しやすい環境を整えてあげましょう。 - 道具の準備
桁数が多いそろばんを使うと混乱しやすいので、最初は子どもの手になじむサイズや桁数を選ぶのがおすすめです。
教室選びのポイント
- 指導者の質や指導方針
子どもと相性の良い先生かどうか、体験教室でチェックすると安心です。 - 通いやすさ
週に2〜3回通うケースが多いため、自宅や学校から通いやすい場所を選ぶと負担が少なく続けやすいです。 - 目標設定と検定対応
段や級の取得に力を入れている教室だと、モチベーションを保ちやすいでしょう。
統計データや専門家の声
日本珠算連盟の調査によると、そろばん学習を1年以上続けた小学生の約80%が「暗算が得意になった」と回答しています。また、多くの指導者は「学習を継続する上での最大のポイントは、最初の基礎固めと保護者のサポート」と指摘しています。
特に小学低学年までにそろばんを始めると、指先と脳を使う習慣が早期に身につくため、子ども自身も数字や計算への抵抗感が減りやすいようです。
まとめ
そろばんを上達させるコツは、正しい指使いと反復練習、そして保護者の温かいサポートにあります。以下のポイントを押さえて、ぜひお子さまのそろばん学習をサポートしてみてください。
- 最初はゆっくりでも正しい指運びを身につける
- 一桁の計算から段階的にレベルアップ
- 短時間集中でメリハリのある練習スケジュール
- 成長を見える化し、褒めながらモチベーションアップ
- 通いやすい教室や相性の良い指導者を選ぶ
そろばん学習で得た集中力や計算力は、学校の勉強だけでなく日常生活のあらゆる場面で役立ちます。コツコツと取り組んで、ぜひお子さまの可能性を大きく広げてくださいね。